【サマリー】
大成建設株式会社が施工する大規模道路造成工事において、CalTaのデジタルツインデータプラットフォーム「TRANCITY(トランシティ)」を活用した、設計にない想定外の支障物の体積測定が行われました。ICT施工モデル現場として各種デジタル技術の活用が進む現場において、現場の日常業務に3次元データをどのように定着させ、土量管理や施工検討の高度化につなげているのか、その具体的な取り組みについて伺いました。(取材日:2025年12月23日)
- 【課題】掘削作業に伴い設計にない支障物が出現した際、従来の断面を切る平均断面法では正確な形状の把握が難しく、概算値による数量管理に留まっていた。また、重機稼働エリアでの手作業の計測には安全上の配慮が必要だった。
- 【対策】360度カメラによる短時間の動画撮影と、大成建設が開発したGNSS測量機「Field Checker(フィールドチェッカー)」による位置座標の取得を組み合わせ、TRANCITY上で高精度な3次元モデルを生成。
- 【効果】詳細な形状の可視化により、実際の数量に極めて近い、高精度な体積データの算出が可能に。現場での測定作業は1人で完結し、重機停止時のわずかな「隙間時間」を安全かつ有効に活用できるようになった。
1.掘削現場で出現した「想定外の支障物」をどう正確に計測するか
大規模な道路造成工事において、土工の掘削作業中に設計図面にはない支障物が突如として出現することがあります。このような場合、工事を止めず円滑に進めるためには、その支障物の正確な体積(数量)の把握や、現況を詳細に記録した資料の作成を迅速に行う事が求められます。
従来、このような支障物の体積測定では、トータルステーションやGNSS測量機等を用いて複数点の座標を計測し、その断面データをもとに「平均断面法」によって体積を算出する方法が一般的でした。この従来手法では、計測のために複数名の人員が必要となるほか、計測機器の据え替え作業や見通しの確保などに手間がかかります。
さらに、従来の断面を用いた計算では、複雑な形状をした支障物の凹凸を完全に捉えきることが難しく、どうしても「断面を切った概算数量」での管理にならざるを得ないという、精度面での技術的な限界を抱えていました。また、重機が頻繁に行き交う土工現場において、手作業による測定作業のために重機稼働エリアへ長く立ち入ることは、安全管理の観点からも課題となっていました。

2. 360度カメラ×Field Checkerで実際の数量に迫る高精度な3次元化
そこで現場が着目したのが、既に簡易測量用途として導入していた大成建設自社開発のGPS測量機「Field Checker」と、CalTaの提供する「TRANCITY」のシームレスな連携でした。
Field Checkerは、1人でも迅速かつ手軽に任意の位置の座標データを取得できる機器です。今回の手法では、まず支障物の周囲にARマーカー(基準点)を配置し、その位置座標をField Checkerで計測。その後、360度カメラを用いて対象物の周囲を歩きながら動画撮影を行います。

現場担当者からは、「以前試したiPadによる3Dスキャンは、画面を見ながら足元に注意して細かく動く必要があり大変でしたが、360度カメラなら全体を一度に撮影できるため、非常に扱いやすく安全です」と、撮影の手軽さが評価されています。
撮影した動画をTRANCITYにアップロードする際、Field Checkerで取得した位置情報を紐付けることで、デジタル空間上の実際の座標・実際の大きさを持った高精度な3Dモデルが自動的に生成されます。 TRANCITYによって支障物そのものの「3Dモデル」が生成されたことで、従来の平均断面法のように断面データから数値を予測するのではなく、立体構造としての複雑な凹凸形状を克明に捉えられるようになりました。これにより、従来の概算値とは一線を画す、「実際の数量に限りなく近い、極めて精緻な体積データ」の算出・管理体制が確立されたのです。
3. 「隙間時間」を安全に活かす、日常業務に溶け込む3Dデータ
TRANCITYを用いた3次元計測は、精度向上にとどまらず、現場の働き方や安全性にも大きなプラスの効果をもたらしています。
Field Checkerと360度カメラによる一連の現地作業は、約10分程度で完了します。そのため、重機が稼働している時間帯を避け、重機停止後のちょっとした「隙間時間」を使って、1人でも安全かつ迅速にデータを取得できるようになりました。
「2人で予定を合わせて半日かけていたような測量・計算作業が、1人でスマートに行えるようになったため、隙間時間にサッと撮りに行ける機動性が非常に大きいです」と、現場の作業負荷は大幅に軽減されています。

実際に算出された体積データについても、現場では「最初に手計測で算出した値と比較しても大きなズレはなく、実務において信頼性を持ったデータである」と評価されています。生成された3Dデータは専門的な解析に留まらず、今や現場の日常業務の中でごく当たり前に活用されるツールとして定着しつつあります。
4.日々の形状変化を捉え、施工管理のさらなる高度化へ
今回の支障物計測での実績を踏まえ、今後はこの3Dデータを日常的な施工管理へ応用していくアイデアも挙がっています。
土工現場は、日々形状が変化する仮設道路やヤード(資材置き場)、盛土・切土など、常に地形が動き続ける環境です。そのため、今後は同一箇所を時期を変えて定期的に360度カメラで撮影し、TRANCITY上で時系列の3次元データとして重ね合わせる運用の検討が進められています。
これにより、どこがどれだけ掘削され、どれだけ土が盛られたのかという「土量の差分把握」や、現況に即したタイムリーな「施工検討」への応用が期待されています。特別な機材や専門知識を必要とせず、誰でも手軽に扱える360度カメラとTRANCITYの組み合わせは、現場の施工管理を着実にアップデートしていく可能性を秘めています。
【参考資料】大成建設 ニュースリリース(2023年11月10日)
クラウドを活用した測量支援アプリケーション「Field Checker」を開発 施工管理システム「T-iDigital® Field」の機能を拡張し生産性が更に向上
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2023/231110_9817.html

